平成20年度土木学会関西支部技術賞

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■ 受賞者 ■
■ 受賞業績内容説明 ■

技術賞
おおさか東線開業(放出〜久宝寺) 〜地域活性化と鉄道ネットワーク充実〜
西日本旅客鉄道株式会社
住宅密集地域における大断面シールドの施工並びに環境保全対策について
大阪府東部流域下水道事務所
奥村・西松・東急・淺沼・奥村組土木共同企業体
早期供用を目的としてTBM避難坑を利用した長大道路トンネルの建設
京都府 
鹿島・飛島・鉄建・公成・吉村特定建設工事共同企業体
鹿島建設株式会社技術研究所
速度抑制効果を期待したトンネル壁面デザインによる新しい交通安全対策
阪神高速道路株式会社京都事業部
いであ株式会社大阪支社
撤去歩道橋の海外移転事業(人と人との架け橋づくり)
大阪府都市整備部交通道路室道路環境課
大阪府都市整備部河川室河川整備課
大阪府枚方土木事務所
ハイブリッド式親子シールドによる長距離掘進 −京都府いろは呑龍トンネル−
京都府流域下水道事務所
大林・鴻池・三井住友・ケイコン特定建設工事共同企業体

技術賞特別賞
一般県道塩田一宮線 よいたいトンネル建設工事
兵庫県西播磨県民局県土整備部
株式会社オリエンタルコンサルタンツ
株式会社熊谷組
神戸海上新都心整備事業 −臨海部大規模コンテナヤード跡地の土地利用転換−
神戸市都市計画総局
神戸市みなと総局
財団法人神戸港埠頭公社

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業績内容説明
<技術賞>
おおさか東線開業(放出〜久宝寺) 〜地域活性化と鉄道ネットワーク充実〜
西日本旅客鉄道株式会社
 おおさか東線は、単線のJR城東貨物線を複線・電化することで旅客線として整備するものであり、平成20年3月に南区間の放出〜久宝寺駅間において5駅を新設し、開業した。
 本工事は、市街地や営業線に近接した施工のため、列車や周辺民家に対する安全確保と環境への配慮が求められた。線路上空や営業線に挟まれた区間での高架橋構築においては、移動式支保工やハーフプレキャスト型枠の採用により、近接作業を軽減し、工期と安全性の両立を図った。さらに、軽量であり側方移動の軽減も期待できる気泡モルタル盛土やアースドリル杭の採用により、近接民家への影響を抑制した。
 また、発生土を盛土材に有効活用した建設発生土の抑制、吸音版設置等の環境対策工の実施、一部駅でのホーム柵等の設置など、乗客や沿線の方々に配慮した「人にやさしい鉄道」を目指した。
 本業績は、営業線や近接民家等との近接施工という厳しい施工条件の中で最新技術を駆使して短期間に難工事を完了したこと、騒音・振動等の環境対策にきめ細かな配慮をしたこと、既設貨物線を有効活用した新線開業により地域の活性化に貢献したことなどの点が評価された。
おおさか東線新加美駅付近を走行する直通快速
おおさか東線新加美駅付近を走行する直通快速
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<技術賞>
住宅密集地域における大断面シールドの施工並びに環境保全対策について
大阪府東部流域下水道事務所
奥村・西松・東急・淺沼・奥村組土木共同企業体
 寝屋川流域下水道飛行場南増補幹線(第3工区)下水管渠築造工事は、仕上り内径φ6,000mm、延長L=1.96kmの大阪府八尾市南部から大阪市平野区にかけての住宅密集地域でのシールド工事であり、特に発進立坑部は、非常に狭隘で困難な施工条件が重なった。
 本工事における縦坑の構築ではまず、航空機の吊り技術と橋梁のワイヤ技術を導入し、前例のない大規模既設シールド管渠(外径φ4,300mm)の吊り防護を実現した。次に、泥水式シールド工法の大規模な泥水処理設備が周辺環境に与える影響を低減する対策に様々な工夫を行った。また、建設汚泥の再生利用の促進に向け、紙・パルプの製紙業等で実績のあるスクリュープレス導入に加え、省面積型として縦型の「スラリー連続脱水システム」を開発し、連続脱水、減容化、コーン指数(コーンぺネトロメーターを土中に押し込む際の貫入抵抗力度)による管理を可能とした。
 本業績は、密集市街地の狭隘な空間の中で他分野の技術を活用し大規模な構造物の吊り防護を可能としたこと、スラリー連続脱水システム等の新しい技術を開発したこと、周辺住環境に配慮した防音ハウスを施工したことなどの点が評価された。
多方面の技術を駆使し、困難な施工条件を克服
多方面の技術を駆使し、困難な施工条件を克服
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<技術賞>
早期供用を目的としてTBM避難坑を利用した長大道路トンネルの建設
京都府
鹿島・飛島・鉄建・公成・吉村特定建設工事共同企業体
鹿島建設株式会社技術研究所
 建設中の宮津野田川道路(延長6.4km)では、避難坑を有する道路トンネル(延長3,660m)がクリティカルパス(計画を進める上で最も時間がかかり困難な部分)であった。起点側坑口には住宅が密集しており、終点側からのみの掘削となるため、避難坑を利用してトンネルの早期建設を図った。
 避難坑で採用したTBM工法では、従来の『削孔検層』や『TBM機械データ』など、地質評価のために個別に利用されている情報を多変量解析と地球統計学を用いて一括評価し、リアルタイムに出力できる『TBM統合地質評価システム』を開発した。このシステムは汎用性があり、今後の活用が期待される。
 また、掘削初期において地質状況が当初の予測に比べて著しく悪かったため、事前調査(比抵抗高密度探査)と掘削済みの地質を比較し、早期に全線の地質再評価を行った。その結果に基づき、設計及び掘削計画を合理的に修正することでトンネルの早期建設を達成した。
 さらに、『ダンプトラック運行管理システム』や『本坑での連続ベルトコンベア』などの技術を積極的に採用し、周辺の環境に配慮するとともに、事業への理解を深めて頂くため見学者を積極的に受け入れ、見学者の数は5年間で約3,000名に達した。
 本業績は、TBM施工を効率的に行うために地質状況を的確に把握するTBM統合地質評価システムを開発したこと、本システムの適用や避難坑の活用など施工法の工夫により工期短縮を図り工期内にトンネルを完成したことなどの点が評価された。
避難坑TBMの貫通(平成18年10月)
避難坑TBMの貫通(平成18年10月)
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<技術賞>
速度抑制効果を期待したトンネル壁面デザインによる新しい交通安全対策
阪神高速道路株式会社京都事業部
いであ株式会社大阪支社
 平成20年6月1日に開通した阪神高速8号京都線稲荷山トンネル(鴨川東〜山科)では、速度抑制を目的として、トンネル内の壁面にデザイン塗装を施し、新しい交通安全対策を行った。対策の概要は、連続的に展開する模様(シークエンスデザイン)を適正に配置することで、心理的に運転者に速度抑制を促す効果を期待するものである。
 デザインの構築にあたっては、インターネットや現場見学会などを利用して、CGを用いたアンケート調査を行い、運転者の行動をより実際に近い形で調査・分析し、仕様を決定した。基本的なデザインは、京都らしさをイメージさせる「竹林」を模したものであり、地域への密着性を考慮した快適な走行環境を演出している。
 さらに、施工後には実車による走行実験を行うなどその効果を定量的に検証した。その結果、現在まで対策を施した坑口付近での交通事故は無く、安全・安心な道路を提供している。
 本業績は、トンネル内の壁面デザインによって車両の速度抑制を図るという新しい手法を導入したこと、壁面デザインを交通安全対策に取り入れるための動画CGの活用によるデータ収集や現地実験による効果検証を行ったことなどの点が評価された。
速度抑制効果を期待したトンネル壁面デザイン
速度抑制効果を期待したトンネル壁面デザイン
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<技術賞>
撤去歩道橋の海外移転事業(人と人との架け橋づくり)
大阪府都市整備部交通道路室道路環境課
大阪府都市整備部河川室河川整備課
大阪府枚方土木事務所
 平成18年5月27日、ジャワ島中部地震(ジョグジャカルタ特別州が中心)が発生し、災害復旧のため地震直後と同年8月の2回にわたり大阪府職員が現地に派遣された。その際、現地の倒壊、流失した橋梁の復旧に対する強い要望を受けた。(約10年前に土石流で流失)
 当時、大阪府では、少子高齢化などにより高度成長期を中心に建設した多数の歩道橋の利用者が減少しており、付近に信号や横断歩道があるなどの理由で撤去しても支障のない歩道橋について、平成18年度より順次撤去することとした。その第一号として、守口市にある佐太東歩道橋を撤去することとなった。
 そこで、この歩道橋の階段を除いた部分をインドネシア・ジョクジャカルタへ河川上の橋梁として移転することになり、企業・府民から広く協賛・募金を集め、大阪府都市整備部交通道路室を事務局として「人と人との架け橋づくり実行委員会」を組織し、撤去歩道橋の海外移転事業を行った。
 本業績は、災害復旧の支援事業として撤去した歩道橋をインドネシアへ移転し再利用したこと、日本の技術と現地の技術を融合させながら人力により橋を架設したこと、維持管理の手法も含めて技術移転を図ったことなどの点が評価された。
平成19年2月、再利用歩道橋の架設が完了。完成式典も盛大に行われた。
平成19年2月、再利用歩道橋の架設が完了。完成式典も盛大に行われた。
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<技術賞>
ハイブリッド式親子シールドによる長距離掘進 −京都府いろは呑龍トンネル−
京都府流域下水道事務所
大林・鴻池・三井住友・ケイコン特定建設工事共同企業体
 京都市、向日市、長岡京市にまたがる桂川右岸流域は、昔から浸水被害に見舞われてきた地域であり、京都府ではこの流域の雨水対策事業として雨水を貯留するための地下トンネル「いろは呑龍トンネル」の整備を行っている。
 この事業のうち、本工事は、延長が3,993mという長距離であり、断面の大きさが異なるトンネルをハイブリッド式(親機:泥土圧式工法、子機:泥水式工法)の親子シールドにより築造したものである。掘進距離の長い子機区間についてはビットの摩耗が少ない泥水式工法を採用し、危険な作業となるビット交換を省略した。ただし、断面が大きく距離の短い親機区間はコスト面で優れている泥土圧式工法を採用したために、親機・子機で工法が異なるハイブリッド式となった。工法の異なる親子シールドの分離作業は、複雑で難易度の高い作業となったが、事前に入念な計画やシミュレーションを行い現場作業に着手した結果、大きなトラブルもなく無事に親子シールドを分離することができた。その後の長距離掘進も順調に進捗し、子機区間については平均月進量410mという高速施工を達成することができた。
 本業績は、シールドの親機と子機の使い分けと泥土圧式と泥水式の使い分けにより地盤条件に適した高速施工を達成したこと、危険な作業となるビット交換を省略することにより安全性を確保したことなどの点が評価された。
ハイブリッド式親子シールドにより雨水貯留トンネルを築造
ハイブリッド式親子シールドにより雨水貯留トンネルを築造
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<技術賞特別賞>
一般県道塩田一宮線 よいたいトンネル建設工事
兵庫県西播磨県民局県土整備部
株式会社オリエンタルコンサルタンツ
株式会社熊谷組
 一般県道塩田一宮線「よいたいトンネル」は、河川(揖保川)増水時に過去から幾たびも孤立した地区住民の避難路の確保と安全な通行及び産業の活性化を目的として計画された。しかしながら、このトンネルから150m近接したところに景勝地「与位の洞門」(市道与位清野線)があり、洞門の上部に、風化により開口亀裂が生じて不安定化した危険岩塊が多数存在したため、トンネル工事の発破振動による影響が懸念された。
 そこで、トンネル掘削及び洞門の安定化対策検討委員会を設け、危険岩塊安定化対策、地山状況に応じた発破方法や管理基準等を設定し、これに基づき施工し、無事トンネル工事を終えることができた。
 また、掘削対象地山が凝灰岩質であることから、地山分類上の地山等級Cの区間にはインバート(トンネル底面の逆アーチに仕上げられた覆工部分)を設計していた。ところが亀裂の少ない非常に堅硬な岩盤が出現したため、地山性状の再評価を行ったところ、一般に凝灰岩で懸念される脆弱特性がみられなかったので、地山状況に応じてインバートを設置することとし、採否判定フローを作成した。これにより掘削を進めた結果、当初計画より大幅にインバートの施工長を減じることとなり、施工期間の短縮、工事コスト縮減につながった。
 本業績は、施工環境や地山状況に応じて発破方法や管理基準を決定し困難な工事を克服したこと、孤立していた地域に対する貢献度が高いことなどの点が評価された。
与位の洞門に近接して施工された一般県道塩田一宮線「よいたいトンネル」
与位の洞門に近接して施工された一般県道塩田一宮線「よいたいトンネル」
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<技術賞特別賞>
神戸海上新都心整備事業 −臨海部大規模コンテナヤード跡地の土地利用転換−
神戸市都市計画総局
神戸市みなと総局
財団法人神戸港埠頭公社
 神戸港ポートアイランド西コンテナバース(旧PC1〜3)は、都心に近い大規模コンテナバース跡地(約35ha)を「神戸海上新都心」として、港湾緑地と一体的に都市機能用地へ土地利用転換を図ることとなり、神戸学院大学、兵庫医療大学、神戸夙川学院大学の3つのキャンパス等が立地することとなった。
 大学の施設整備に合わせ、道路等のインフラ整備を面的且つ一体的に進めるため、「土地区画整理事業」を導入するとともに、「まちづくり交付金事業」や「港湾環境整備事業」、「港湾関係民活事業」を導入し、大学と一体となったまちづくりを進めた。
 また、神戸海上新都心地区では、地球温暖化対策に配慮しCO2の発生を抑制するために地区全体を最大限緑化することに努め、平成19年4月には3大学のキャンパスが開校し、神戸の市街地が一望できる緑地「ポーアイしおさい公園」や道路等がオープンした。
 現在、神戸海上新都心地区は学生や教職員をはじめ、地域住民、市民、観光客が集い、新たな賑わいが創出されている。
 本業績は、時代の変化に沿った土地利用転換により広大なコンテナヤード跡地を賑わいのある学園都市へ再生したこと、地区全体の緑化や再生水の利用等環境に配慮したことなどの点が評価された。
「神戸海上新都心」を空から望む(神戸港)
「神戸海上新都心」を空から望む(神戸港)
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